経済のお話

戦争で負けた日本は、連合国の最高司令官、マッカーサーの支配下に置かれました。

 

マッカーサーは、もともと、ケインズ経済学の支持者だったので、それを後進国の日本で試してみようと思います。

 

結果、日本は高度経済成長しました。

 

ケインズと言っても、今の方には馴染みがないかもしれませんが、日本という国の基礎を築いた経済学者です。

 

ケインズ経済学の特徴は、景気が悪くなると失業者も増えるので、国も税金が入って来なくなります。

 

そこで、普通は増税して、入って来る税金を増やそうとします。

 

これを「均衡財政」(きんこうざいせい)と呼びますが、ケインズの発想は逆でした。

 

景気が悪くなった時に国が更にお金を使って公共事業を起こし、労働者を雇って給料をあげるのです。

 

これを「均衡財政の是正」(きんこうざいせいのぜせい)と呼びます。

 

当然、国は貧乏になりますが、国民は潤って消費が増え、景気が回復するというわけです。

 

つまり、公共事業を呼び水にするわけです。

 

現在ほど職業が複雑化し多様化していない当時は、このやり方が見事に成功します。

 

人間の体に例えると、シンプルな体の作りだと点滴を打つと、すぐに体全体に栄養が行き渡るのですが、複雑な体の作りになると点滴を打っても、中々、全体には行き渡らないという事態がおこるわけです。

 

企業がお金を溜め込む「内部留保」(ないぶりゅうほ)とかいう事態もおこります。

 

腕に点滴を打つと、腕だけが太るわけです。

 

他にも、ケインズは、「累進課税」(るいしんかぜい)といって、所得の多い人から税金をたくさん取って、所得の少ない人からは、あまり取らないという低所得者層を優遇する方法を用いたのも特徴です。

 

その為、アメリカと比べ日本は、貧富の差が少なく、中間層の所得者が多い国となりました。

 

ちなみに、消費税は、誰からも同じ金額を取るので、「累進課税」とは違う貧乏人ほど負担が大きい税金です。

 

お年寄りからも取れる税金なので、高齢者の多い現在には政府が確保したい税収の一つです。

 

中央銀行がもっている金の量によって通貨の発行量がきまっていた「金本位制」(きんほんいせい)を撤廃する事を唱えたのも彼が最初です。

 

人為的に通貨の量を調整する事で景気をコントロールしようというもので、「管理貨幣制度」(かんりかへいせいど)と呼ばれます。

 

話が反れましたが、そうやって、ケインズの経済学でやってきた日本がどうなったかというと、莫大な財政赤字が出来ました。

 

何しろ税収が少ない時に、雇用を生み出す公共事業を増やしたので国のお金は底をつき、そのお金を国民から国債を売って借りる状態が続きました。

 

じゃあ、ケインズのやり方は間違っていたのかというと、私はそうは思いません。

 

財政赤字が出来た反面、日本の一般企業は、急成長しました。

 

トヨタや、松下を筆頭に、どんどん貿易黒字を生みだしていきました。

 

福祉も充実して、失業して命を絶たなければならない人の数が間違いなく減りました。

 

そして、1980年代は、アメリカに次いで経済大国2位の国となり、アメリカから疎まれるようになりました。

 

アメリカの経済が、苦しいのは、日本のせいだと。

 

ジャパンバッシングというやつです。

 

日本は、外国の企業が入って来れないように法律の規制がたくさんありました。

 

競争社会から日本の中小企業を守る為でした。

 

「護送船団方式」(ごそうせんだんほうしき)とも呼ばれました。

 

アメリカは、それらを公平でないと政治的な圧力をかけて、法律の改定を求めます。

 

そして、日本はアメリカからの圧力に負けて、「規制緩和」(きせいかんわ)を始める事になります。

 

国際社会の時代に、鎖国は古いということですが、私は、ただ単に、日本の政治家がアメリカの政治家に負けただけだと思います。

 

そして、どうなったかというと、外資系の企業がたくさん入って来て、ますます競争が激しくなり、より経費削減を強いられた企業が、海外に出て行って、日本にいなくなる事態が起こりました。

 

企業の空洞化です。

 

企業がいなくなると税金が取れません。

 

日本の労働者を雇う機会もなくなるので、失業者も増え、景気は低迷します。

 

ただ、唯一、救われるのは、日本の国民が貯金をしている事です。

 

日本の国債は、その貯金で買ってまかなっているということです。

 

日本の財政赤字を、国民の貯金で穴埋めしているので、外国からお金を借りている債務国ではないということです。

 

日本政府は、国民から借りたお金を外国に貸してもいるので、債務国ではなく、債権国という立場でもあります。

 

ただし、日本の企業がいつまでも貿易黒字を維持出来なければ国民の貯金も減り、国は借りるお金すら失くなってしまいます。

 

日本は、そういった意味で、赤字なのか黒字なのか専門家でも分かりにくい経済体質になっています。

 

戦後、日本はアメリカの言うことには常に忠実でした。

 

殿様がアメリカに変わっただけで、日本人の生活様式は江戸時代から何も変わっていないのかもしれません。

 

貯金も、お百姓さんが年貢を隠して貯めていたのと同じです。

 

同じく敗戦国のドイツは違いました。

 

常に、アメリカに逆らって、独自の道を切り開いています。

 

ヨーロッパを一つにまとめ、ユーロという貨幣を造ってアメリカのドルに対抗します。

 

そういう意味で、ドイツと日本は正反対です。

 

経済は勝つか負けるかしかありません。

 

どちらが勝つかは、これからの状況次第です。

 

 

 

 

 

 


 

財政赤字は、更にこれからも膨らみそうです。

 

この財政赤字を、どうするかが日本の課題のようです。