政治のお話

大久保利通(おおくぼとしみち)という人がいます。

 

薩摩藩の藩士で明治維新を成功させ、西郷隆盛、木戸孝允と並んで「維新の三傑」と称される天才政治家です。

 

 

彼は紳士的で、口数も少なく、他を圧倒する威厳があって、誰も彼に意見することが出来ない、そんな人物だったようです。

 

 

あの語学が堪能なイギリス公使パークスが、舌を巻いた早稲田大学の開設者の大隈重信(おおくましげのぶ)でさえ、彼に対しては、逆らうことがいっさい出来なかった人物だといいます。

 

 

また、金銭的には潔白な人で、予算のつかない国の公共事業には、私財を投じたり、明治国家の為に人生を捧げたり、善い事もいろいろされています。

 

しかし、冷酷非情な部分もある人物でした。

 

 

 

政治というのは、駆引きです。

 

外交というのは、外国に対しての駆引きです。

 

利害と利害のぶつかり合いです。

 

有利に事を運ぶために、根回しという裏工作も、絶対、不可欠です。

 

根回しが出来ない人物は政治には向いていないと私は思います。

 

植物の世界では、目に見える地上の争いだけではなく、地下で強烈な陣取り合戦が行われています。

 

沢山、根を張った方が繁栄し、生き残る事が出来て、地下の争いで勝てていない争いは最初からしない方が得策なのです。

 

つまり、勝つための布石(ふせき)が打てる人物が政治には向いているという事です。

 

布石とは囲碁の世界では無駄な手のように思われて、後で勝敗の鍵を握る重要な手を言います。

 

そこにその石を置けば後で戦況に有利に働くという将来の事柄について見通す力や見識の力量などの「先見の明」(せんけんのめい)を言います。

 

孫子の兵法書の「戦わずして勝つ」と同じで、戦う前に既に勝負が決まっている状態です。

 

彼は、外交に対して、その天才的な手腕を見せます。

 

 

沖縄は、昔、中国人と日本人が半々ぐらい住んでいて、琉球(りゅうきゅう)という独立国家でした。

 

中国のものでも、日本のものでもなかったのです。

 

大久保利通は、中国を相手に中国の属国である台湾に軍隊を派遣し、制服しようとします。

 

 

中国は仰天します。

 

必死に抵抗します。

 

そして、彼は、悲鳴をあげた中国に、台湾を中国の領土と認める代りに、沖縄を日本の領土と認めさせました。

 

 

大久保利通の働きがなかったら、沖縄は日本の領土ではなく、その一部である尖閣諸島も、日本固有の領土だと主張も出来なかったかもしれません。

 

 

そういった面では、彼は、凄い政治家でした。

 

ただ、大久保利通は残忍で、冷酷な面もあります。

 

敵には徹底的に、ひどい仕打ちをします。

 

味方にすると、たのもしいけれど、敵にすると恐ろしい、

 

そんな人物です。

 

最後には暗殺されてしまうのですが、彼によって歴史が動かされたのは間違いありません。

 

 

詳しくは、司馬遼太郎の「翔ぶが如く」文春文庫に書かれています。

詩経(しきょう)小雅(しょうが)「鴻雁の什」(こうがんのじゅう)にある「斯干」(しかん)という漢詩の「鳥のこれ革(と)ぶが如く」から取ったものであるとされ、「斯干」は兄弟が仲良く新しい宮室を建てるという詩で、明治という国家を見事に築き上げた西郷隆盛(さいごうたかもり)と大久保利通の二人を兄弟に例えたものだと言われます。

 

流水が海に流れるように全てが明治という国家に向かって流れた激動の時代に薩摩を代表する二人の「隼」(はやぶさ)が水しぶきをあげて波打ち際を飛び立つ、そんな光景が目に浮かびます。

 

太陽の光に照らされて、きらきらと輝きながら…

 

興味のある方は、一度ご覧になってみてください。